1942年研究者セルマン・ワクスマンが「微生物由来の物質で他の微生物の発育や代謝を阻害する物質」を発見しそれをAntibiosis(抗生物質)と名付けました。
1924年アレキサンダー・フレミングが青カビからペニシリンを初めて発見し、世界から感染症が無くなるのではないかと云われる程の大発見でした。
実際ペニシリンの効果は絶大で多くの生命がその恩恵を受けました。その後研究が進み細菌以外の感染症(ウイルスや真菌)に対する抗生物質が次々と開発され。抗ウイルス薬や抗真菌薬が生まれました。
その効果は絶大で医療現場ではなくてはならない薬となっていますが、同時に色々な副作用がある事がわかっています。
多く生まれた抗生剤はその構造や作用により分類されていますが、その中のテトラサイクリン系の抗生物質{代表的にはドキシサイクリン(ビブラマイシン)・ミノサイクリン(ミノマイシン)}は他の抗生物質にはない優れた特徴があるために過去多く使われました。
それはテトラサイクリンの抗菌スペクトラム(色々な菌に有効なその範囲)が他の抗生剤の中で最も広く、しかも安価である為でした。
つまり感染症には間違いないが感染菌を特定できない時、しかも症状を早く押さえる必要のある時には、色々な菌に効果のあるテトラサイクリンをまず投与し、菌が特定できた後にその菌に有効な抗生剤を投与するという使われ方がされたのです。
しかも安価な為に家畜の感染予防として家畜の飼料にしばしば投入されて使われました。
これらの理由の為テトラサイクリンに対する耐性菌(薬剤に触れた細菌のうち死滅しなかった一部の細菌がその薬剤に対して抵抗力を持ってしまい、以後その細菌の子孫に対してはその薬剤が殆ど効かなくなってしまう事)が生まれ、最近ではあまり使われなくなっていました。
しかしテトラサイクリンの副作用がよくわかっていなかった時期にはかなり使用されていました。
妊娠時にこの抗生剤を使用したその子供や乳幼児の永久歯(乳歯)に歯の着色(別写真参)が見られ、骨や歯牙形成に対する有害作用(ことに色素沈着)があることがわかり、妊婦・授乳中の母親・8歳以下の小児への投与は可能な限り避けるべきなのが一般的になっています。
しかし最近日本小児歯科学会から再びテトラサイクリンの使用が増えているという報告があり、このたびこのブログで報告させていただきました。
上記のようにテトラサイクリンは非常に有効な抗菌剤であり、やむなき必要性があって使われる場合意外では歯科的には妊産婦・小児には使ってほしくない抗生剤であります。
これを読まれたお母様方は自分や子供たちに抗生剤を飲ませる時に少し注意を払ってください。
2012年11月2日 坪内英之