9月21日のブログで予告しました食後の歯磨きについての、日本小児歯科学会の公式見解が発表になりましたのでご報告いたします。
まずは日本小児歯科学会が最近発表した『食後の歯磨きについて』の文章を引用します。
『長年の間、保育所・幼稚園・学校では食後にはなるべく早く歯磨きをしてから遊びましょうと指導してきました。
(略)ところが最近になって、食後すぐ歯を磨くと、あたかも歯が溶けてしまうというような報道が新聞やテレビで伝えられたため、現場がやや混乱しているようです。
実際の人の口の中では(略)唾液に酸を中和する働きがあり、酸性飲料の頻繁な摂取がないかぎり、すぐに歯が溶けないように防御機能が働いています。
つまり日本の一般的な食事では食後すぐの歯磨きにより歯が溶けることはまずありませんからご安心ください。
反対に食後歯磨きをしないままでいると、すぐに歯垢(プラーク)中の細菌によって糖分が分解され、酸が生産されて歯が溶け始めます。
結論としては、食後は早めに歯磨きをして歯垢とその中の細菌を取り除いて歯が溶けるのを防ぐことの方が虫歯予防には重要です。』
〈日本小児歯科学会〉
これでは何の事か判らない方もおられるでしょうからこの中にある「新聞やテレビでの報道」の中から、一つ抜粋してみます。
『歯磨きのタイミングは食後30分〜1時間、ゆすぎは程々に』と云うタイトルです。
青山ホワイテリア院長大谷珠美氏
『食後すぐ&ゴシゴシ」磨きが歯のダメージリスクを高める?』
『食後は「酸」によって歯の表面のエナメル質が軟化しており、その状態で歯ブラシをすると歯のエナメル質を傷つけてしまう危険性もあるとして、30分〜1時間をおいてブラッシングする事を推奨している。』
また『過剰な歯磨きは「酸」によって軟化した、歯の表面のエナメル質を削り落としてしまう危険性があり、歯磨きをする時はゴシゴシ力を入れて磨くのではなく、歯の表面に付いた酸や、食べカスを取り除く(クリーニングする)というくらいのつもりでブラッシングしてほしいとアドバイスしている。』
[リセマム(生活・健康、健康のニュース)から抜粋]
後半は「食後すぐの歯磨き」とは直接関係がありませんが、前半はまさしく日本小児歯科学会の公式発表とは逆の見解と云えます。
皆さんはどう思われますか?
私は少し迷っています。結論を出すには少しばかり資料が不足しているのです。
日本小児歯科学会がもう少し、核心に触れた見解を出してくれるものと期待していたのですが期待はずれでした。
しかし一般の方が混乱を起こしてはいけませんので、なぜ迷っているのか私の疑問・意見を書いておきます。
最初に食後30〜60分経ってからの歯磨きに現実味はあるでしょうか。
殆どの人は食事を食べたというきっかけがあるからこそ、歯を磨くのではないでしょうか。
余程自分の口の中に関心のある方は別にして、一般的には食後30分ないし1時間経ってからの歯磨きを習慣化する事が出来るでしょうか。
ましてやただでさえ歯磨きをしようとしない子供達が(私は小学校・中学校・高校の学校で毎年2回ずつお口の健診をしていますが)
食後1時間後の歯磨きの実行などとうてい不可能です。
「食後はいきなり歯磨きをしないで酸の生産がないキシリトールガムを噛ませろ」という意見もありますが、
あくまでキシリトールは甘味料であり三度三度の食事直後の甘いもの摂取の習慣化が、
果たして「食育」という観点からも良い事がどうかという意見もあります。
次にお口の中のPHは食事直後(箸を置いた直後と云う意味)から強酸(PH4以下)になっている訳ではありません。
PHが最も低くなる(強酸になる)のは個人差はありますが食後8分ぐらいと云われています。
つまり食事直後からエナメル質が傷つき易くなっている訳ではない事が理解できます。
ですから333運動が謳われていたのです。
「一日3回3分以内に3分間」です。
3分以内に磨き始めればエナメル質はまだ軟化しておらず、傷つける事にはなりません。
それでその問題は解決すると思われます。
ついでに一日3回の歯磨きに付いて私の意見を述べさせていただきます。
細菌の増殖には条件があります。湿度・温度・PH・糖分です。
好条件かそろっていれば細菌は約8時間に1回分裂するといわれています。
つまり1日3回で24時間という訳です。
実は私は開業して25年。333運動全盛期に大学を卒業し、上記の知識と経験を持って患者さんに歯ブラシ指導をしてきました。
しかし25年歯ブラシ指導をしていく中で、理論道理にはならない症例を多く見てきました。
その中にはつじつまが合わない事も出てきています。
その事に付いては後日もう一度ブログに載せますので、ご覧下さい。
2012.12.10 坪内英之