お子さんをお持ちのお母さん方が、お子様の成長過程において最も関心が有るのは歯並びではないでしょうか。
それは当然の事です。
すくすく育つ子供達の成長にあって初めての乳歯が生え、20本生えそろって乳歯列期が完成します。それが抜け始めて永久歯に交換し(混合歯列期)、12歳臼歯の萌出によって28本の永久歯列が完成する。その12年を要するダイナミックな変化の過程は、まさしくお母さんの目の前で繰り広げられる、愛すべき成長変化なのですから・・・。
「目は口程にモノを言い」と云うことわざが示すように、元々口元は実際の言葉を発するだけではなく、目と同じくその人らしさの第一印象を人に与えてしまう程「モノ」を云ってしまう部分であります。
ドラキュラ博士が恐ろしい顔に見えるのは、上の歯の(上顎)の犬歯が唇からはみ出して長いからであり、肉食動物が戦いをする時に歯を剥き出しにして相手を威嚇するのは、武器としての歯(特に犬歯)を敵に見せる事でいかに自分が強いかを見せる為であります。
人の犬歯は相手に恐怖感を与えるものではありませんが、もしも犬歯がなかったら何処となく間の抜けた顔になってしまいます。
顔の中にあってよく動く口、そして白い歯・・・。
歯並びが相手に与える印象は意識するしないに関わらず、非常に重要な要素である事が解っていただけるでしょう。
一昔前、八重歯(犬歯が正常な歯並びの中に入る事が出来ず、唇の内側に隠れてしまった不正咬合)が、かわいいと云われた時代がありました。これはひとえに間が抜けた顔にみえたからではなかったでしょうか。時代によって流行は変わっていきますが、根本的なものはそんなに変化する事はないでしょう。
そこで今日は大ざっぱな悪い歯並び(不正咬合)に付いて、お話ししておきます。
不正咬合は大きく分けて2種類です。
1つが顎の成長は正常だが歯が大きい為に或は小さすぎる為に起きる不正咬合(歯性不正咬合)。
2つ目が歯は正常なのに顎が大きすぎて或は小さすぎて起きる不正咬合(骨格性不正咬合)です。
歯性の不正咬合はそれ程あわてて直す必要はありません。矯正医の考え方にもよりますが、10歳を過ぎても或は成人してからも矯正する事が可能な症例が多々あります。
それに比べて骨格性の不正咬合は、遺伝的な要素が絡んでおり、その子の成長と共により悪くなってしまう可能性を含んでいます。つまり矯正治療を急ぐ可能性があると云う事です。
しかし何が歯性で何が骨格性かは矯正医の複雑な骨の分析によって、予想可能となる場合が多く、素人目(矯正医以外の歯科医も含めて)にゆだねるべきではありません。ご両親やおじいちゃんおばあちゃんに不正咬合がある場合は、早めに矯正医を受診する事をお勧めします。